2019/12/15
こんにちは、queです。今回は、クラフトやDIYのお話しでは無いですが、クラフトやDIYなどの作業には、欠かすことのできない工具を大切にしようってお話しです。
皆様が作業をする時に、使ったことがあると思う、ハンマーと付随する工具ですが、かなり特殊なお話しです。
皆様は、益光(ますみつ)と言う、工具のブランドをご存知でしょうか?
かなりマニアックなお話しですので、この記事を読みに来てくださった方は、ご存知と思いますが・・・。ご存知の方は、サラ~っとどうぞ。
益光の工具は、いろいろとありますが、ハンマーと当盤が代表格かと思います。益光の工具は、自動車の鈑金職人に、とても人気があり、鈑金職人なら益光を使っているのが、あたり前とも聞いたことがあります。
現在でも、一部の鈑金職人さんが、ハンマーと当盤を探しているようです。
と言うもの、現在では、益光が廃業した??(正式には分かりませんが、廃業をしたらしい)ので、益光のハンマーと当盤を手に入れることが、簡単には出来ないようです。それゆえにハンマーと当盤の希少性が高くなって、とても貴重な工具となっているようです。
現在の私は、別の国家資格を取得して、畑違いの職業についておりますが、10数年前は自動車の鈑金職人でした。
当時、見習いで自動車修理工場に勤めて、数年間は自動車の塗装を教えて頂いておりました。
合間で、鈑金職人さんのお手伝いをしていくうちに、自動車板金の楽しさや職人の技術のすごさにビックリしてから、塗装見習いから鈑金見習いにしてもらいました。そこからは、現在の職業につくまで、ず~と鈑金をしていました。
何もわからない見習いに、道具を大切にすることや、ハンマーの違いなんてわかる訳がないです。
ハンマー、トンカチ、金槌、何が違うんだ~?? って感じでしたね。
今でも鮮明に覚えていますが、休憩時間に、師匠のハンマーと当盤をカチンカチンと叩いて遊んでいたら、それを見るなり、今まで見たことも無いぐらいの全力ダッシュで、師匠が走ってきて『何やっとんじゃ~~』からの≪ゴツン≫でしたね。
その後1時間ぐらいは、全力でお叱りを受け『俺の益光に二度とさわるな~』ってガンガン怒られましたね。ま~この時に初めて益光を知ったのですが・・・。この出来事は、本当によく覚えています。
この時にそのハンマーと当盤は、師匠の師匠から譲り受けたものであること、益光の使う鉄の良さなど、他とは違うことをたくさん教えてくれましたが、マニアックな話で、長くなるので割愛します。(いろいろありますが、もし一言で言うならば、鉄の硬さなどの具合が絶妙)
それからは、見習いとして技術を教わりながら、道具を大切にすることなどを、たくさん教えて頂きました。
何年経っても、益光を使わせてもらえることは無く、代わりに何かよく分からない錆び錆びのハンマーと当盤を、使えと言われてましたね。
師匠からは、自分で道具を買って使ってはいけない、与えられた道具だけを使え、途中で辞めることがあったら、与えられた道具は全てピカピカにして返せ、と言われていましたので、自分で道具を買うなんてありえないことでした。
のちの話ですが(初めから、良いものを使っても、本当の良さがわからない、大切に出来ない)との考えがあってのことだったそうです。本気でいじめられてるのかと思ったりするときもありましたが・・・。今思うと、可愛がって頂いてたのだとよく分かります。
錆び錆びのハンマーと当盤でも、メンテやアタリの調節の仕方などを教わり、使っていくうちに愛着も湧いて、手放せない自分だけの相棒みたいに思えてきます。気が付いたら、どちらも黒光りするぐらい、使い込んでいましたね。
何年目ぐらい覚えていませんが、鉄板のナラシの作業をしていると、師匠が来て『これを使ってみろ』と昔カチンカチンして、全力で怒られた師匠の益光ハンマーと益光の当盤が置いてありました。
見たときは、え~~~って思いましたが、使わせてもらうと、『何じゃこれ、すごいな~』って思いましたね。説明するのが難しいですが、叩きやすいと感じた事を覚えています。
何十年も手入れをして、大切に使っている道具ですから、アカンはずがなくて、これが職人のハンマーと当盤なのか凄いと思わされましたね。
それからはごくごくたまに、使わせてもらえるようになり、少しできるようになったきたのかなと、勝手に思い嬉しく感じていた時がありました。
悲しいことに、勤めていた会社の経営が傾き、師匠から他社に行くことを勧められ、職場を変えることになりました。
当時は、自分で自動車修理工場をすることを夢にしていたので、業界の厳しい状況を見せられた感じでしたね。
もやもやしながらも他社への就職も決まり、師匠のもとを離れる際に、約束であった与えられたすべての道具を綺麗にしてから、御礼を言いに道具を持って行くと、師匠が『お前なら大丈夫や!やっていける!ハンマーはワシが死んでも持っていくから、お前は当盤を持っていけ!』と師匠の益光の当盤を譲ってくれました。
何だか、師匠に職人として認めてもらえたようで、とても優しく後押しをしてもらった気がします。
使えと持たせてくれたのに、大切過ぎて使えませんでしたね。本当に宝物ですからね。
当時から益光は人気があり、本物の新品を揃えるのに材料屋さん等に協力者がいないと、なかなか揃えるのが難しい状況でした。
師匠から頂いたものは、初代益光だったみたいで、揃えれるのは2代目益光しかありませんでした。
ちまたで言う、バッタものも多く出回っていたので、知人の材料屋さんからの正規ルートで必要な物から、コツコツと揃えていきました。
あっと言う間に十数万円の世界でしたね。一生モノと考えると、ま~ま~って感じですかね。何よりも本物が手に入ることが大切でしたので。
益光のハンマーは、アタリの調節をすると使いやすくなるのですが、新品の益光の当盤は馴染ますように調整をしないと、すごく使いにくかったです。
何十年プレーヤーの益光の当盤しか知りませんでしたので、新品の当盤の使いにくいこと。
新品だけに面の角がピンピンに立ってるので、調整をするまで面しか使えなかったですね。これは時間が掛かりましたね。なんと言っても鉄の塊なので。
その後も不景気の影響や車離れなどもあり、私は師匠に相談をして業界を離れることにしました。(当盤を返せと言われましたが、宝物で大切にしまっているのでイヤと言って、今でも大切に保管しています。)
初めに伝えた通りに、今は畑違いの職業についておりますが、益光が手に入らない状況を聞いたので、自分の思い出話になってしまいましたが、益光について記事にしてみました。
若手の志高き鈑金職人様、簡単には手に入らないと思いますが、もし新品なり中古なりで、手に入れるチャンスがあったときは、手に入れておかれても良いものと思います。本当に稀ですが、私はネットオークションやメルカリとかで、益光が出品されてるのを見たことがあります。(なかなかの、お値段がしてましたが・・・)
現在は、鋼板の材質の変わり、鈑金作業が減って交換が主流と思いますが、それでも、必ずナラシが必要な時があると思います。
最高の技術と最高の道具で、究極の仕上りを!! 誇り高き、自動車鈑金職人の皆様、頑張って下さい!!
とても長くなってしまいましたが、伝わる人には伝わるが、伝わらない人には全く伝わらない、私の思い出話と道具を大切にしようってお話しでした。。
それでは、また次回!!
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